新潟歩き旅Day1
今回から、新潟歩き旅の実際の工程について詳細に書いていきます。
まず計画についておさらいですが、
・都内自宅→新潟駅の300キロ歩き旅
・車や自転車は使わない
・1日30キロペース
・所要時間は約10日
・お金はなるべく使わない
・寄り道もしたい
といった内容でした。
これらが下方修正されていく様をご覧ください。
1日目
7月27日。
予報では台風が接近していたので、出発するか悩みました。
しかし、先延ばしグセのある私が延期すると一生実行されない可能性があるので、無理矢理決行。
グダグダした結果、出発時刻は11時前とかなり遅くなりました。
すると早速一時間ほどで問題が発生。
とりあえず歩みを進めたものの、想像以上に進みが遅かったです。
まずダメなのが看板。
固定方法が雑なので肩にバンバン当たる。非常にウザい。
ただ、これは試行錯誤してすぐに解決しました。
本当にダメだったのはザックです。
メチャクチャ重いし、メチャクチャ肩に食い込む。
そのせいですぐに肩が限界を迎え、30分に一回は休憩していました。
結論から言うとザックの調整が正しくできていなかったために苦しんでいたわけですが、当時の私は「初日だし身体が出来上がっていないだけだろう」と納得しました。
じゃあ初日に備えてコンディションを整えておけよと今では思います。
そうこうして、死にそうになりながら入間市に突入。
気が付くと、日が沈み始めていました。
初日の目標は坂戸市突入だったのですが、この時点で時間的にも体力的にも無理なことを悟ります。
疲れもピークなのでコンビニの駐車場でダウン。
「あまりにも進まないし、やっぱり帰ってしまおうか。明日は台風も来るし。」
しかし駅まで歩くのも遠くてキツイので、仕方なく歩きます。
完全に無になって歩いていると、前方から「お兄さん」と声が。
顔を上げると、推定21歳くらいの綺麗なお姉さんがいました。幻覚ではなさそう。
喩えるのが難しいですが、30%ほど安田美沙子因子がある綺麗なお姉さんです。
「あ、あああ、はい」
疲れて陰キャラの極みみたいな返答しかできない。実際陰キャラですが。
「さっきお母さんと二人で後ろ歩いてたんですよ。そしたらコンビニのところで座り込んじゃってたんで、大丈夫かなと思って」
「す、すみません」
「新潟まで歩くんですか?」
「は、はい、今日が一日目です」
「凄いですね!あの、これおにぎりなんですけど、よかったらどうぞ」
「…!?」
「いや、もし荷物になっちゃうなら大丈夫なので…」
「あ、ありがとうございます!」
なんだか申し訳ない気持ちもありましたが、せっかくの善意を断るのも変なのでありがたく頂きました。
「あの、写真撮ってもいいですか?」
おにぎりをくれた聖人の頼みを断る理由もないので快諾します。
ガッツポーズをして構えていると、
「じゃあ、こっち向きで並んでもらっていいですか?」
との一声が。
なるほど、自撮りツーショットなんですね。
ソロだと思ってポーズを決めてしまった。
若干恥ずかしい思いをしつつ、改めてガッツポーズをして写真を撮ります。
「ありがとうございます!じゃあ、新潟まで頑張ってください!」
「こちらこそ、ホントにありがとうございました!頑張って歩きます!!」
そんなやりとりをしながら、お姉さんと別れました。
その後はまた黙々と歩いていたのですが、おにぎりの入った袋をザックにしまうため道沿いにあった公園(彩の森入間公園)に立ち寄りました。
今日で30キロ歩くのは確実に無理なので、今夜の野宿場所の再検討も行います。
地図を見ながら悩んでいると、
「ちょっとそこのきみ!」
と、また一声が。
見ると、ジョギング中のおじさんがそこにいました。
「旅してるの?」
「はい、新潟まで歩こうと思って」
「新潟まで!?」
と、驚いていました。
いや、私も近所の公園に「新潟まで歩いているところです」と言う人間がいたら確実に「!??!??」ってなると思います。
私はもちろん、おじさんも旅に対して強い憧れを持っている方で、色々なことをお互いに語りました。
「明後日台風来るけど大丈夫?」
「一応、対策は考えてあるので大丈夫です。台風は大変ですが、今回出発しなかったらそのままズルズルと計画を延期しちゃう気がして」
「その気持ちわかるなあ。俺ももう退職したし、車で日本一周したいっていう目標があるんだけど、考えるだけでなかなか決行に至れなくて」
「僕も本当は、もっと装備の吟味とかしなきゃダメだったと思います。でも考えているうちにこれキリがないなと思うようになりまして。計画練っていたんですけど、練るだけで一生出発しないんじゃないかという気がしてきたので、思い切って出てきました」
他にも
「俺、車で日本一周したいんだけどさ、進むのは一日50キロまでにしたいんだ」
「50キロですか?」
「一周するのが目的ではないからさ。行こうと思えば何百キロも行けるけど、それだと運転に夢中になって道中が見れないじゃない。だからゆっくり行きたいんだよね。まあ、君みたいに歩きはキツイから車なんだけど」
「その気持ちわかります、僕が今回わざわざ歩きにしたのは同じ理由で…」
と、お互いがお互いの言いたいことを言うような会話が一時間ほど続きました。
この方と一緒に旅をしたら、物凄く気が合いそう。
「さて、お兄さんは今日もまだ進むんでしょ?」
「そうですね、もうちょっと進んで適当なところで寝ようと思います」
「お兄さんと話していて、僕も頑張ろうって勇気もらえたからさ、お礼にジュース代出させてよ。150円…は無かったから200円、はい」
「す、すみません。ありがとうございます」
「じゃあ頑張って!」
そうして別れの挨拶をして、また道を進みました。
19時半ごろ、河川敷にちょうどいい広場があったので野宿場所に決めました。
予報ではまだ台風は来ないそうですが、安全と雨対策のため、高台の近くにあった木の下に設営しました。
ツェルトは面倒だったので銀マットと寝袋だけです。
グタグタになりながら、夕食の準備をします。
頂いたおにぎりの袋を取り出すと、中にはおにぎりの他にもウイダーゼリーとサイダーが入っていました。
夕方の時点では帰ろうかなと考えていた私ですが、お姉さんとおじさんに励まされたことにより、「成し遂げなければいけない理由」みたいなものができた気がします。
新潟までの歩き旅なんて所詮は己との闘いでしかなく、誰かのためにやっているわけではありません。
辞めたところで何のマイナスも無いですし、むしろ旅なんかしないで勉強でもしていたほうが有意義でしょう。
しかし不思議なもので、人から「頑張って」とか「勇気をもらった」とか言われると、途端に辞めることが罪に感じられてしまうのです。
これは責任感とは確実に違った感情で(実際、辞めたところで何の責任もないのですが)、今もよく解明できていません。
ただ言えるのは、こうして人から励まして頂けるのは私が「旅をしてよかった」と思える瞬間の一つです。
そうやって「旅をしてよかった」と思った後だからこそ、「お前、こんな面白い旅を辞めるのか?」という意味での罪の意識があるのかもしれません。
何はともあれ、半日にして折れかけた心でしたがなんとか持ちこたえることができました。
そんな感じで1日目は終了です。
一応、20数キロ進みました。